私たちの共同研究者、ナカガワ・クリスチアニ・イズミさん

―被爆者を対象にした心理学的研究で優秀論文賞を受賞―

博士論文の審査後、委員と一緒に

リンガヒロシマの共同研究者、ナカガワ・クリスチアニ・イズミさんによる博士論文がサンパウロ大学の「2021年度優秀学位論文賞」を受賞しました。論文の題目は、「心的外傷と記憶の痕跡、罪悪感と赦し、恥辱と自尊心―被爆者証言に見る矛盾の研究」(仮訳。原著はポルトガル語)です。授賞式は、2021年10月20日でした。

ナカガワさんは、2018年の1月と2月に広島で被爆者の証言を収集し、心理学的な分析をしました。彼女は修士課程ですでに、第二次世界大戦下において米国が原爆の開発に至った歴史的・政治的事実について考察していましたが、博士課程では、これまでの社会科学的視点とフロイトによるトラウマ(心的外傷)の心理分析とを組み合わせる手法を取りました。その結果、心理学が陥りやすい過度の単純化を避けることに成功しました。

        論文の表紙

彼女は、約200点の被爆者による証言を分析する作業の間、証言者の記憶の中で3つの心理現象が繰り返し見られることに気づきました。それは、“心的外傷”と“罪悪感”と“恥”でした。修士課程の研究が発端となるこのテーマの考察を、博士論文ではさらに発展させることができました。

被爆者の証言を検証するために、彼女は心理学的アプローチだけでなく日本の文化的背景や社会心理学の研究領域からの視点も必要とした点が重要です。この研究は、被爆者の矛盾―つまりタイトルとなっている「心的外傷と記憶の痕跡、罪悪感と癒し、恥辱と自尊心」―について解明していますが、それこそが被爆者の心理的側面を真に理解することができる「鍵」なのだと、彼女は言います。

ナカガワ・クリスチアニ・イズミ          博士(人間科学)

ナカガワさんは、リンガヒロシマのプロジェクトで、ポルトガル語の原爆文献を担当しています。2018年に、彼女は博士課程フェローシップを取得して2か月間広島に滞在し、広島市立大学広島平和研究所で客員研究員としてロバート・ジェイコブズ教授の指導を受けました。被爆者の紹介や、彼らから聞き取りをする際の通訳など、広島の友人・知人が協力を惜しみませんでした。また、サンパウロ大学心理学研究所でジョセ・モウラ・ゴンサルベス・フィリオ教授、ロンドンのバークベック大学でステファン・フロッシュ教授の指導を受けました。その後、2020年2月に、彼女はサンパウロ大学で博士号を取得しました。サンパウロ、広島、ロンドンという国境を越えた研究計画の実施は、サンパウロ州研究支援財団(FAPESP)の助成で実現しました。